「人生100年時代」といわれ、終活の意識も高まってきている現代。
そこにあるのは、「自分の人生は自分で決めていく」という確固たる意志だけでなく、「決めていかなければならない」時代の後押しもあるようです。
そうしたなか、終活にも人生をデザインしていく方向性が加わってきましたが、たとえ時代が進んだといえども、死については決めたくても決めようがないことは事実です。

2016年の企業広告に「終末の死」を取りあげ、故・樹木希林さんが登場し、話題をよんだ「宝島社」は、その意図をプレスリリースでこう伝えています。
日本の平均寿命は年々更新され、今や世界一。
いかに長く生きるかばかりに注目し、
いかに死ぬかという視点が抜け落ちているように思います。
いかに死ぬかは、いかに生きるかと同じであり、
それゆえ、個人の考え方、死生観がもっと尊重されてもいいのではないか、
という視点から、問いかけています。
生まれてきたことを選べなかったように、私たちは死ぬことについても選びようがありませんが、逝き方について知ること、考えていくことはできるはずです。
富山市が取り組む在宅医療の現状
日本は1980年前後に、家ではなく病院で死ぬのが当たり前の状況になりましたが、厚生労働省の調査によると、「自宅で療養して、必要になれば医療機関等を利用したい」との回答を合わせると、60%以上の国民が「自宅で療養したい」と答えており、年々、増加傾向にあります。
2012年の在宅死の統計(がん政策情報センター)によると、在宅死亡率の全国平均は12.8%、富山県は平均を下回り、9.9%となっています。
また、人口20万人以上の都市別の在宅死の割合(2014年度)で見ると、「富山市」は下から2番目(※)と、全国的にみても在宅死が低い地域であり、病院で亡くなる割合がまだ多い地域であることがわかります。
(※ 砺波市、氷見市は12~14%)
<引用:日本経済新聞「自宅で臨終」に地域差3倍 在宅医療の手厚さ反映>

厚生労働省は、「今後、在宅医療を必要とする者は29万人と推計され、約12万人増える」と見込んでおり、「終末期ケアもふくむ生活の質を重視した医療としての在宅医療のニーズは高まっている」と発表。また、2012年(平成24年)に成立した「社会保障・税一体改革」では、医療・介護分野の方向性として、『「病院完結型」から、地域全体で治し、支える「地域完結型」へ』の転換を目指しています。
こういった現状をふまえ、富山市では2017年4月に、富山市中心街に在宅療養支援診療所である「まちなか診療所」を開業し、富山市の在宅医療に取り組みはじめました。
富山市まちなか診療所には、3名の医師、3名の看護師の他に、社会福祉士、保健師、精神保健福祉士が常駐し、通院困難な方のための訪問診療を行っています。

同診療所の渡辺史子医師によると、開業から一年間(2017年4月から2018年3月まで)の在宅看取り件数は28件。
訪問診療の他にも、地域の医療・福祉・介護関係者などへの支援にも取り組み、また在宅医療を広く認知してもらうために、専門職だけでなく、市民への出前講座も積極的に開催しています。

全国にくらべて、15年早く高齢化が進んでいる富山。
終末期を在宅で過ごしたいというニーズは高まっているものの、全国的にはまだ低くとどまっている今の状況を、渡辺医師はこう話します。